『ジニのパズル』同じ名前の主人公と"生きる違和感"をともにして

ジニのパズル

ジニのパズル


大学の図書館を何気なく歩いていると見つけたこの『ジニのパズル』。ジニはわたしと名前が同じだったので、なにか運命を感じたように手に取りました。


在日朝鮮人のジニは東京の朝鮮学校に入ったものの朝鮮語が分からず、周りとなかなか馴染めません。そんな中、いまの北朝鮮のことや金政権について、制服のチマチョゴリを着て色んなことに悩み、苦しみます。


彼女は今いる場所への違和感を感じ、しかし違和感を受け入れることができず、小さな、でも、とても大きな"革命"を起こします。


わたしはこの本を読んでいろんなことを感じましたが、それにはわたしの生い立ちの背景も影響しているので少し書きます。


わたしのルーツは朝鮮半島の南の方なので、自分が朝鮮学校に通う選択肢はなく、ずっと日本の学校に通って育ちました。


わたしは日本名ではなく日本語読みの韓国名で生活していますし、国籍も韓国のままだったので周りとの違いを感じてしまうこともありました。


時代のおかげか、わたしが国を理由にいじめられることは全くありませんでしたし、非難中傷を受けることもありませんでした。勉強ができれば、好きな道に進学できるという、幸せな環境で育ちました。ルーツなんて関係なく、勉強ができると尊敬される、優しい人達の揃った環境で生きることができました。


こんなふうに日本で、普段は国のことなんて何も気にせずみんなと一緒に過ごしていますが、ふとした瞬間に「わたしはみんなと違うんだよな」と思うことがありました。


だからといってなにか起こるわけではないのですが、小さな違和感があったのです。


この話の主人公のジニは、朝鮮学校という場所に通い、日本の学校と全く違う空間にいることで、その違和感がより強かったのだろうと思います。「わたしはどうしてここにいるんだろう」と。そして、その違和感に耐えられなかった。


わたしは「在日韓国人は出てけ!」と叫ぶヘイトスピーチを聞いた時、感情を無にするようにはしているものの、やはり心にチクッと小さなトゲが刺さります。


北朝鮮のミサイル発射や、彼女に起こった池袋での事件を受け、主人公ジニの心に刺さったトゲはこんな小さなものではなく、心を壊してしまうような大きいものだったのでしょう。


朝鮮半島にルーツがある人もない人も、心のどこかに違和感を感じる人達みんなに読んで欲しい作品です。