左手を使う訓練
「もし右手が使えなくなったら左手で生活しないといけない。でも今のままでは左手を上手く使えない。だから左手を使う練習をしている」と言って授業プリントに左手でメモしたり、左手で箸を使っている友人がいる。それもそうだと私は思い、いつもは右手でやっていることを左手でやることが増えた。歯磨き、皿洗い、体洗い。昔、オレンジページの「脳を活性化する」特集に「利き手じゃない手を使う」というのが載っていた。左手を使うと脳が活性化されるらしい。脳が活性化うんぬんはよく分からないが、左手で歯を磨くとうまく歯ブラシを動かせない。思うように身体が動かないもどかしさ。きっと程度の差こそあれ、リハビリ中はこの思いで頭がいっぱいになるのだろう。右手のケガ、右脳の損傷、その他右手が使えなくなる疾患諸々。今これになったらマズい。せめて左手を使えるようになってからにしてほしい。ケガや交通事故には気をつけようと改めて決意する昼食後の歯磨きタイム。
そういえば、以前部活の先輩が右手をケガして固定しているときがあった。先輩、右手が使えないと大変じゃないですか?と聞くと、ちょっとほほえみながら右手を見て「要介護だね」とおっしゃった。部飯でその先輩は左手で器用に箸を使いながら煮魚を食べていた。骨の取り方も素晴らしい。とても器用な人なんだな、と思っていた。追いコンのとき、その先輩が将来マイクロサージェリーをやりたいとおっしゃっていて、向いてる、絶対向いてる、左手で綺麗に魚を食べられる人がマイクロサージェリーに行くべきだとうなずいた。しかしなんでまた手が器用な先輩の話をするのかというと、ほほえみながらの「要介護」も、包帯で包まれた右手を垂れ下げながら左手で綺麗に煮魚を食べる姿もとてもセクシーだったからです。私は左手で歯磨きをしながら「あのときの先輩、、よかった、、」なんて思い出し、不器用に左手を動かすのでした。