茨木のり子「ハングルへの旅」を読んだ
- 作者: 茨木のり子
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 1989/03/01
- メディア: 文庫
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茨木のり子、といえば現代文の教科書に詩がのっていた記憶がありました。なんの詩かは覚えていませんでした。
尹東柱の詩集を買おうと思ってAmazonを開いたら一緒に購入されている本にこの「ハングルへの旅」があがっていました。詩人の茨木のり子さんとハングルのつながりがよくわかりませんでしたが、とりあえず読んでみました。
それが、とても面白かった。
茨木さんはもともと少女時代に「朝鮮民謡選」を読んで育ち、心奪われる仏像はすべて朝鮮系で、隣の国に引き寄せられて50代からハングルを習い始めたんだそうです。
韓国語を習い始めたのが1976年。このころは今ほど韓国文化が日本に入っておらず、韓国語教室がなかなか見つからない。苦労して探し出した教室のメンバーや先生とともにハングルの魅力に浸かっていく様子や、日本の方言とハングルの似ているところ・違うところ、韓国のことわざ、韓国を旅した時の風景。いろんな話が載っています。このころにこれだけ韓国に興味を持っていたひとってなかなかいないんじゃないかな。
わたしの両親は「若いころ、日本で韓国の音楽が流れるなんてありえなかった。まさか、そんな日が来るとは思わなかった」って言っていました。
わたしの印象に残ったのは、同じ韓国語教室に通う医大生の今井さんの話です。
医師国家試験を間近に控えながらも韓国語を熱心に勉強し続け、医師になってからは救急車で運ばれてくる韓国人の訴えがわからないときに呼ばれ、医師として経験を積んだ後ソウルの延世大学予防医学教室に留学したそうで。医師の進む道としてはいまでも異色だけど、当時では本当に異例のコースを進んだと思います。
わたしはいま韓国語を勉強して、医者になってしばらくしたら韓国の大学に留学したいなあと思っていましたが、まさか同じことを成し遂げた大先輩がいらっしゃるとは知りませんでした。わたしと違って日本人の方なのに。わたしが韓国に行きたいと思うのも変わった道だと思っていましたが、先に道を切り開いた方がいらっしゃったとは。
今井先生は切手収集が好きで、そのペンフレンドの中に韓国の友人ができたことで韓国への興味がわいたそうです。
茨木さんのひとこと「隣の国の言葉を習うのは、ほんとうは当りまえすぎて話にならない筈なのに、実態はあまりにも少数派で、あえてその少数派を選んだ人々は日本人の中でも相当個性の強い人が多い。」
ひょっとして、今井先生のことをググったらなにかしら情報が得られるのでは?と思い延世大学とからめて検索したところ、ヒットしました。
川崎で内科クリニックを開業し、さらに日本人向けに韓国語学習の著書を多数書かれているすごいお方でした。。恐れ多い。。
ブログも書かれています。最近の記事も多いです。韓国語と日本語の両方で書かれています。すげえ。。
こんな方がいらっしゃるのだととても励みになりました。
何気なく手にした本でしたが、得られるものがめちゃくちゃ多かったです。
この今井先生から韓国留学時代の話をうかがってみたい。。
韓国について学びながら抱く感情が新鮮かつ繊細で、さすが詩人…!と思わせる一冊です。ハングルを知らないひともどうぞ。