ヤン・ヨンヒ著『朝鮮大学校物語』を読んだ

 

 

朝鮮大学校物語

朝鮮大学校物語

 

 きょう発売された「朝鮮大学校物語」

きのう予約して、きょうKindleで一気に読んでしまいました。

 

1980年代の朝鮮大学校に通う女性のパク・ミヨンの物語。大阪の下町から東京に出てきたミヨン。その目的は「東京で映画や演劇をたくさん観るため」。全寮制の学校、「ここは日本ではない」という厳しい先生、民族教育、日本の学校とはまるで違う教育、厳しい門限と校則。その中でミヨンは土日の外出許可時に学校を抜け出して演劇を見に行き、それを重ねるうちに、お隣の武蔵野美術大学の学生と恋に落ちます。彼は日本人で、彼女は朝鮮人。過激なヘイトスピーチに合ったり、日本人の人たちが朝鮮についてあまりよく知らなかったりして、心に棘が刺さっていきます。

 

彼女は姉を訪ねに平壌に行きますが、そこで出会った人たちや風景にショックを受けます。民族教育を16年受けてきたのに、自分の国のことを何も分かっていなかったと動揺します。

 

かつて、朝鮮学校が舞台の「ジニのパズル」という本を読みました。

 

 『ジニのパズル』同じ名前の主人公と"生きる違和感"をともにして - 基礎ジニ学

 

ここでも書いたとおり、わたしは朝鮮学校のことは何も知りません。通ってたひとが友達になって、ようやく話を聞くようになったくらいです。

 

いまから30年近く前の朝鮮大学校が舞台なので、いまはここまで通称名を名乗らないと差別されたり、民族名を名乗るかいなかで悩むこともないと思います。

 

ただ、ヘイトスピーチのシーンは思わず泣きそうになりました。

 

どんなシーンか詳しくは読んでほしいのですが、わたしもよく大阪の鶴橋でヘイトスピーチを聞いてたので、思い出しちゃったんですよね。

 

「聞かないぞ!」とは思うのですが、やはり耳に届くと心にチクチク棘が刺さるわけです。わたし個人に向けられた言葉ではないものの、「在日は帰れ」だの「日本のゴミ」だの言われると聞きたくなくても聞こえてしまうものなんですよ。拡声器使っててすごい大きい音だし。それでこんな感じに。

 

 

朝鮮大学校という「日本の中の北朝鮮」が舞台ですが、政治的・民族的にうんぬんより純粋に物語として面白かったので、ぜひ読んでみてください。おすすめです。